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島浦の雑節をいかす一品

雑節とは鰹以外の魚から作られる節の総称。島浦の雑節は主に、うるめ鰯、かたくち鰯、真鰯、むろ鯵、鯖、そうだ鰹を燻製、乾燥して作られます。魚ごとの特徴がある、コクの効いた出汁がとれる雑節は、主に関西や関東に出荷されています。  延岡はうるめ鰯の漁獲量が日本一にもかかわらず、市内のスーパーで、ほとんど島浦の雑節を見かけることがないのは、多くが都市圏に直接出荷されているから。

和食料理人である富山さんは、今回初めて島に渡り、生産者の一人である畦原安志さんを訪ねました。  島浦の節加工業は昭和初期から始められました。初期は鰹節が中心でしたが、旋網漁が普及して鰯や鯖が多く水揚げされるようになると、雑節生産が中心になりました。

畦原さんは20代から雑節作りに携わってきましたが、いまだに出来栄えについて確かな手応えを感じることは少ないと言います。  朝の競りでは、魚の鮮度と脂乗りの少ないものを見極めて仕入れ、製造に入ると、魚の大きさはもちろん、気温や湿度、風向きなどによって、茹で方、燻製、乾燥の加減を調整します。  燻製に使用する薪は延岡市の隣、日之影町や九州山地の中央、椎葉村から調達したカシやクヌギ。魚の旨みと薪に燻された香りが味わい深い出汁を生み出す為、少なくとも五回以上は燻製の工程を行っています。

富山さんは完成前の鰯の燻製の匂いを念入りに嗅ぎます。それはまるで、そこに含まれる旨みの原点を探るかのように。

それは、節と野菜の相性を考え、大根はいりこ、赤芽芋はうるめ鰯、ごぼうは鯖、それぞれの節で取った出汁で別々に味付けをしたもの。それらすべての野菜と小麦粉で作っただご、椎茸を真鰯節の出汁で一椀に合わせると、雑節の『雑』というイメージは払拭され、どこまでも澄んだ上品な味わいの一品に仕上がりました。