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延岡のかつお節

美しく弧を描く熊野江の砂浜。その東の端に、もうもうと湯気を上げる建物がありますした。ここは鰹節をつくる加工場。

高木水産さんの仕事を覗かせていただきました。

この日の材料は日向灘で獲れたソウダ鰹。北浦や日向の「きんちゃく」と呼ばれる巻網船団が獲った魚で、鰹の中でも脂が少なく「刺身では美味しくないが、鰹節には最適」だと高木さんはいいます。

 

30センチほどの鰹、その頭と内臓を熟練の技で包丁を使わずに素早く胴体から外しして、それぞれに平たい籠に並べていきます。

それをいくつも重ねて、電動滑車で吊り上げぐつぐつ煮え立っている大きな釜の中へ。湯気がもうもうと立ち込める中、カツオはおよそ40分茹でられます。

 

茹で上がった鰹の身はホロホロとほぐれそうなくらいに柔らかになっています。高木さんは今度も道具を使わず手だけで器用に身を半分に割り、骨と尾ビレを取り除き、その尾ビレを使って残った内臓など余分な部分を手際よく取り除きました。半身になった鰹を再びカゴに並べて積み重ね、ここから燻製の工程に入っていきます。

 

鰹節には大きく分けて2つの種類があって「枯れ節」と「荒節」と呼ばれています。延岡で作られる鰹節は荒節、燻製を繰り返して乾燥させながら薫香をつけていきます。ちなみにもう一方の枯れ節は燻製の工程の後「カビ付け」をして、カビの作用で乾燥と熟成を行うものです。高木さんの加工場ではソウダ鰹の他、スマガツオやサバの節、イワシのいりこなども作っています。

 

燻製に使うのは、山から伐り出された薪、桜や樫、くぬぎなどの広葉樹です。乾燥し長さを切り揃えたたものが理想ですが最近では薪を伐って整えてくれる人が減り、その調達に苦労するようになりました。

 

1回4~5時間の燻しを、初めの4~5日は毎日続けて行い、その後2、3、日おきに繰り返し。およそ20日ほどで出来上がりです。

魚の状態や天候によって差が出るため、節の状態を見ながらの作業です。

 

同じ漁で採れた同じ鰹でも、脂が多かったりすることもあり品雨とは限りません。上質な鰹節は身が固く締まって強い力で折ってみると、その断面が透明感を帯びた深い赤茶色をして艶があります。そんな鰹節を多く作るためにも材料の魚を仕入れる時の目利きと、燻製の技術が重要になってきます。

 

かつて延岡市には島浦島を中心に多くの鰹節の加工場がありました。その数は減少していますが、生み出される鰹節の品質の高さは今も変わりません。その多くが県外の鰹節問屋に送られ、削り節に二次加工されて全国へと流通しています。

「直接延岡の消費者に届く商品ではないから、ここで鰹節が作られていることを知らない人も多いですよ」と高木さん。

それでも誇りを持って、今日も美味しい鰹節作りに励んでいます。