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イタリアンの料理人がみた大和カンパチ

延岡ではカンパチの養殖が盛んで、それぞれの生産者が餌や養殖方法に研究を重ね、多くのブランドカンパチが存在します。  今回、イタリアンの料理人、金井さんと訪れたのは土々呂地区で『大和カンパチ』を養殖する栁田三幸さん。『大和カンパチ』は、ブリの稚魚を獲るモジャコ漁の際、副産物で獲れる希少な天然カンパチの稚魚を養殖したものです。栁田さんはそのモジャコ漁のプロフェッショナルでもあります。稚魚から出荷まで、自社完結の養殖カンパチ、理想の魚に仕上げるために、さまざまな工夫を行っているのだとか。

まずは餌、ミネラルやビタミンE、ウコンを配合し、体内から健康に作り上げるイメージで育てます。体型は体高と幅のある、栁田さん曰く『寸の詰まった』魚体を目指します。さらに潮の流れや生簀の大きさを計算して、魚があまり泳ぎ回らない工夫をすることで、身がスジ張ってしまうのを防いでいると言います。  そして最も大切にしているのは、出荷時の締め方。一撃で脳天締めし、すぐにエラを切り、ぶら下げて血の流れを作ります。心臓が動いているうちに、たっぷりの氷水に浸して眠ってもらうことで、暴れて魚体に熱が入るのを防ぎつつ血抜きします。魚が完全に眠っている間に、手早く身を外して真空パック。このスピードが品質を大きく左右するのです。

料理人の金井さんは、栁田さんの地元の同級生です。同級生だからと言うわけではなく、日頃から『大和カンパチ』を高く評価しています。生臭さを全く感じさせない身は、新鮮なうちはプリプリと弾力があり、数日寝かせると、きめが細かくなり、更に甘みが増します。カルパッチョやソテー、地元の海で育ったカンパチが店のメニューを華やかに彩ります。  この日は、『大和カンパチ』を延岡の原木椎茸『このはなしいたけ』と合わせました。肉厚なこの椎茸も濃厚な味付けに負けない力を持っています。

伝統的な地元の食材を軽やかな感性で、多くの人に親しまれるイタリアンの一皿に仕立てる金井さんと、同級生の養殖漁師栁田さん。立場は違えど、目をキラキラさせて話す二人の「食材を作り上げる情熱」と、「食材を活かす情熱」は共通のもの。食に生きる者同士の信頼関係と土々呂の海への愛情を感じることができました。