土々呂漁港に正午や、火事でもないのにサイレンが鳴り響く時があります。それはシラス漁を終えた船が帰港してくる合図。
季節を問わず、漁ができる天候の日には昼頃にかけて数回、シラスを獲って帰る船の数だけ港周辺に広く聞こえるように響き渡ります。
サイレンを聞いてすぐに集まってくるのは、ちりめんの加工業者の人たち。目の小さな網ですくい上げられ、木のトロ箱に移されたキラキキラひかる小さいシラスを。手に取り見極めています。
水揚げされるシラス(イワシの稚魚)にもいくつか種類がありますが、身の白い片口イワシが最適とされています。
船から全てのシラスが水揚げされると、漁港の職員の掛け声と共に入札が始まります。業者の人たちがそれぞれ紙に金額を書きこんで職員に渡します。
一番高値をつけて落札した人は、シラスが溢れるほど入ったトロ箱が幾つも積まれたパレットごと早速フォークリフトで、自分の加工場へ運んでいくのです。まさに、時間との勝負」のようです。
入札が行われた港のすぐ近くにある高橋水産。持ち帰ったシラスをきれいに洗って不純物を取り除きます。そして、ぐつぐつの沸騰する釜に投入。
再び釜の中が沸騰するまで3分ほど。透明だったシラスが真っ白に茹で上がって浮き上がってきます。それを職人さんが紐のついた平たいザルで掬い上げます。白いシラスが薄く均一にすくい上げられる様子はそれはまるで紙漉きのようです。
ザルのまま粗熱を取り、ある程度乾燥させた後、屋上で天日に干します。数時間おきに手を入れて、ちりめん同士がくっつかないようにしながら、乾燥具合を見ていきます。夏場なら2時間程度、冬場で半日程度の天日干しでチリメンが出来上がります。
高橋水産のちりめんは茹でるときの塩分濃度を控えめにしています。そのため、比較的しっかりと乾燥させるのが特徴です。
出来上がったちりめんをもう一度チェックして小エビや小さいイカ、タコなどが混じっていないかをチェックします。再び透明感を帯びたちりめんの目や胴体は青く輝いて、品質の高さを物語っています。